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アンディとレッド【2】

アンディの休学後、私はレッドともクラスが別れてしまったが、
偶然廊下なんかですれ違うとアンディの様子を尋ねた。
「目が見えない状態からは脱した」とか、わずかな回復の兆しは伺えたものの、
復学は難しそうだった。

そして、そのまま私たちは卒業してしまった。

進学してからしばらく経ったある日、学年トップだったクラスメイトに町で偶然再会した。
彼女は新しい環境に翻弄されてて、明らか私との再会に苦痛を感じていた。
表情が澱んでた。何の呪いや。
わざわざそんなことに傷付かんでええのに。
と言いたくて言いたくて仕方なかったが、それを口にしたら彼女はショック死するなと
口を慎んだ。

再会の疲労を引きずりながら電車に乗り、アホにもたらされる幸運について考えていた。
アホでよかったんやなあ私...みたいな。
私の想いなどお構いなしに電車は発車し、母校の駅で停車した。
慣れ親しんだ構内に「あんなに楽しかったのに」と思った。
すると、ホームに生徒が下りて来た。
在校生か。ちょっと前まで着てた制服が懐かしかった。

電車の扉が閉まった瞬間、私は奇跡に気付いて飛び上がった。
そして列車の最後尾に移動して、あろうことかドアを叩きまくった。
もしも乗っていたのがバスやったら、停車してドアを開けてくれたかも知れん。
でもそれは電車で、私の想いなどお構いなしに、ゆっくりと走り出した。

アンディ

ホームに下りて来た生徒はアンディだった。
復学したんや!アンディすごい!アンディ アンディ アンディ!
こっちを見て!(←ついさっき気まずい再会したばっかしの人)
※追記:実はこの時まず見間違いを疑い、感傷の引き起こした幻覚を疑い、タイム・リープを疑ったために復学という正常な認知に至るのに時間を要した。あほや。
電車が走り出してても、ドアをバンバン叩きまくる女が居たらさすがに誰でも見る。
アンディは私だと気付いて?「あ!何してんの、もう」って顔で手を振ってくれた。
(見知らぬ変な人に同情して手を振ってくれただけやったら...どないしょー[たらーっ(汗)]
その澱みのない笑顔がうれしくて涙が出た。
一期一会の、一瞬の再会。しかも同じ日に対極的な二人と!なんという巡り合わせ。

私は高校生活を十分満喫して戻りたいと思ったことは一度もないのだけれど、
その時ばかりは本気で戻りたいと思った。
アンディは戻ったけれど1年生から始めなければならない。
あの頃私たちは一緒に下校してたのに、レッドが常に寄り添っていたのに、
私たちは卒業して、あなたの側にもういない。
私たちが居ても休学せざるを得なかったその体で、一人で学校に戻ったなんて。
それはとんでもなく先の見えない棘の道で不毛の荒野だ。私ならニートになってる。
なのに彼女はそっちを選んだ。
その勇気に、若き日の私は人目もはばからず泣いてしまいましたよ。

お願いやから、そこで新しいレッドを見つけて生き延びてアンディ!
どうか近くに居る人!アンディを助けて下さいと、祈りながら。

...周りの乗客をさぞやドン引きさしたことでしょうとも。
周りにしたら私は電車降り損なってめっちゃ無駄にドアを叩いたけど、
開けて貰えず泣き出した、ただの変な人や![ふらふら]
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