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紙吹雪 [舞台]

マツリゴトとは、宗教とは、幸福とは、心の平安とは何か、か。
なんと大きな永遠(十和?)のテーマに挑んだ舞台やったんでしょ。
そんなもんに明確な答えなんかないから、簡単には手ぇ出せへんよね。

けれど、元亀ちゃんと前川さん、あの舞台を作り上げた人々は、
それらの問い全部への、ゆいいつの普遍的な答えを見せてくれました。

民衆を「死ぬ事を恐れない」兵に仕立て上げるための道具としての仏像を彫るよう
双葉を人質に十和に迫る一馬の頭巾姿はまるで、あらゆるものを取り込んで
身動きが取れなくなった”カオナシ”みたいでしたよ。

その一馬の目を覚まさせるため、双葉を救うため、民を救うために十和が彫り上げたものは、
丸太一本丸ごと削り尽くした木屑。
これがお前のために彫った仏だ、と厨子から放たれた大量の木屑、
に見立てられた紙吹雪は壮観でした。
劇場の天にうねり舞い上がり、観る者すべてに降り注がれるそれは、
まさしく匠の技に生み出される木屑に似ていました。
名匠のカンナ屑は紙のように薄くて美しいって言いますもんね。
能面師はサンドペーパーを使わずに面を滑らかに彫り上げるというから、ああいう木屑を創りそう。
奇しくも工房の場面では積み上げられた木材が芳香を放って、マジで工房の香りがする!と思いました(笑)
その丸太を一本分、ノミと槌だけで十和は彫り上げた…手間と心を掛けて…なんちゅう腕前と根気(笑)
一世一代の仏像を彫り上げず、結果的に?その木屑を生むために全力で才能を捧げたなんて、
まさしく、空ヲ刻ム者!

彫り上げた空はまさに一馬の空虚な心を写す鏡でした。
そんな顔さしてても平気な主に、忠誠なんぞ尽くさんでええ!ゆう意思表示とか、
横暴な権力への抵抗として仏像を彫り上げなかったとか、
十和も伊吹のように、一馬と双葉を救うために自らの命を差し出したとか、
様々な解釈が得られます。
それらは、私達が生きるという孤独の中でたまさか得られる、安らぎや幸せを感じる共感です。
その共感を得ることの難しさに、表現を生業とする者でなくても人は日々苦悩している。
人の数だけ解釈があるのだから、重なる人も重ならない人もいることでしょう。

けれど、この舞台はその全ての解釈に重なる、普遍的なものを見事に描いていました。

それが”空”、あの木屑です。
命を懸けて、全てを捧げて才能を木屑に変えるほど、十和は一馬の魂に届く仏の姿を
追い求めて悩み苦しんだ。
妥協してテキトーな仏像を仕上る事もしなかった。
仕上げなければ、双葉を無残に殺されて、自分も一馬の手で首をはねられるかも知れないのに、
木屑しか彫れなかった。
けれど人が作り出す物で、この世のどこに、木屑を生み出さずに彫り上げる仏像があるのでしょう。
もっと言えば、仕事や日々の行いのどれに、木屑の出ないものなんて、あるんでしょうか?
それが精神的なもので、例えば小説などの創作物であったとしても同じです。
読者の心を掴むのは、作家が魂を込め、心を削って完成させた作品ではないか。
それを成すには、膨大な量の心の削り屑が生じたはずです。
マツリゴトも、宗教も、幸福も、心の平安も、遥か昔から。
誰もがその存在を知っていて、確かに存在するのに語られない。
屑を上手に始末して見せないようにしてくれるから、目には見えないけれど。

人には、必ず誰かを、何かを思い悩み生み出され費やされた時間がある。
その空は、心で受け止めるしかないものですね。
十和の空は一馬があってこそ、一馬の心を受け止めて生み出されて、描き得たものでした。

”愛”という字は、心を受け止めると書きますねえ。
幸せは、自らの生み出す木屑の存在すらも愛してくれる人とこそ、共有し得るのかも知れません。
だから私は空を、見失わない者でありたいと思います。大人なら、見なきゃ。
それは「誰かを解ってあげたい」とかのキレイ事っぽく見えるかも知れませんが、
正味自分のためなんです。だってそれは、平安への抜け道なんですからねっ!
楽して幸せになる気ぃ満々なんです♪
空.jpg

それにしても、つくづく山場での九龍さんの不動明王への転生は傑作でした。
ついでに朱雀門まで運んでよ~[黒ハート]とおねだりする十和に飛ぶ力を授けるアイテムの受け渡しは
瞬間移動イリュージョンでしたよ~
三代目が独りで天を翔ける者なら、四代目は仲間と空を駆け回るやんちゃ坊主[揺れるハート]

五鈷杵(大) ヴァジュラ 金剛杵 密教法具 チベット仏教仏具


再演に配慮して、もうちょっとネタバレ控えた方が良かった?
大丈夫、空ヲ刻ム者はネタバレに負けない作品です。バラされても見る価値アリよん♪
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