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牡丹灯篭と夜明け

春一番が吹いたとはいえ怪談って、どうなん?

けど「永遠の0」「風立ちぬ」「”じいちゃん”の戦争 孫と歩いた激戦地ペリリュー」と続くと
まあ、お父さんの戦争も文字に起こしといてやろかいなという気にもなります。

例のごとく、幼い私には怪談風味でしたけど!

ある日突然父が見知らぬ女性を連れて帰宅したのです。
父よりはずーっと年上の、住み込みの仲居さんをしてはるという見ず知らずのその女性を、
今夜一晩だけ、うちで匿わなアカンのやと。
「もう行くところは決まってはるねんけど、今夜だけはうちで預かるねんて。
夜が明けたらお父さんが行くべきところに送ってあげはるらしい」という母の不可解な説明に
夜明けまでって...牡丹灯篭か?

まあ奥歯にものを挟んだ言い方ってやつが、私の妄想を大いに刺激しまくりました。
この女の人実は幽霊なんやろか?父が送って行くのはまさか、あの世...?
それともこの人逃亡者?父は犯罪者を匿う悪の組織の一味?まさか父の愛人...はないな。
ひょっとして父の正体はレジスタンス?ぐるぐる[台風]
けど、その仲居さんは今放送中の「花嫁のれん」の房子さんのように明るくカラリとした女性で
はすっぱな雰囲気を漂わせながらも、小学生の私にすら敬語を通した。
きちんと見極めな、おかしな人やったら困る。
両親ともこの女性の如才のなさや明るいペースに巻き込まれて、見落としてるかも?←腹黒

当時リバイバル・ブーム炎上中のお手玉を差し出して、
「今流行ってんねんけど上手く出来ひんねん。おばちゃん、出来る?」と声を掛けてみた。

「まあ!今どきの子供もそんな遊びをするんですねえ!おばちゃん得意でしたよ」
女性の表情がパッと明るくなって、何度も大技を見せてくれた。
すごい上手い!しかも歌も手順も完璧に覚えてはった。すごいすごいすごい!
勝敗を左右する最後のキメで「どうやったら出来るん?」と聞くと
「とにかく練習です。真剣に続けたらきっとお嬢さんも出来るようになりますよ」と言われた。
ああ、この人ちゃんとしてはる、おかしな人ではないと思いました。←あっさり師匠に昇格

翌朝目覚めると、その人は消えてました。
夜明けと共に父が送って行ったと母から聞かされ、さよならも言わずに?
...夢やったんやろうか?と戸惑いましたが、ちゃんとその人が使った布団が畳んで
部屋の隅にありました。
おばちゃんは偽物の夜明けに惑わされずに、ちゃんと行くべきところへ行けたんかな。
例のごとく説明はされず終いでしたが、あれは追っ手を逃れて職場を移るまでの危険な一夜、
父がうちをDV避難シェルターとして提供したんやと思います。
まったくそれまで縁もゆかりもなかったから追跡不能やったことでしょう。
たった一度きりの事でした。

そして私の夜も明けた。
その頃はお文の事件から日が浅く、眠りも浅く体調を崩し勝ちでした。
元々の弱さにPTSDってやつが影響してたんでしょうね。
自分はどうすれば良かったんやろう?何が出来たろう?と答えを探し続けてたと思います。
そして、父のこの行動に「そうか、うちに連れて来たらええんや」と思った。
お文は助けられなかったけど、もしもお文のような子を見つけたら、とにかくうちに連れてくれば
少なくともその日は殺されずに済む。
私がちゃんと両親に状況を説明出来さえすれば、協力して大人が動いてくれるということやな。
問題の根本解決は果てしなく先で、わからない事だらけのまんまでも、とにかく、
今日、この瞬間に死なないことが最優先!
よし、わかった。

私と父はお文の事件について一切語り合ったことはなかった。
けれど母と私は語りつくして、報道にはない悲惨な真実にまで辿り着いてしまっていた。
それは当時周知されてなかったPTSDを親が懸念して当然の重いものだった。
お文は命の尽きる最後の瞬間まで、正気に戻ってくれると信じて留まったのだ。
犯人は、姉妹の愛を利用して犯行を成し遂げてしまった後に正気を取り戻した。
ゆえに母から「逃げて」というトンデモ発言を引き出してしまったし、
それを次に、私の居ないところで母が父と語りつくしたのだと思う。
父の行動の意味は「危険な場所から連れ出せ」だった。

父の過去についてのほとんどは母経由でしたが、戦争の話だけは父の口から
聞いておりました。
晩婚やったんで、唯一の戦争体験を有する現役父兄として、私の通う小学校で
夏休みの登校日に講演を依頼されたからです。

一緒に逃げていた仲良しの首が、自分の真横で投下された爆弾に当たって飛ばされた。
今の今まで話してた友達の首が一瞬で失くなっていたと語ってました。
んまー話が下手下手で(苦)生徒が食いついたのは「カビた握り飯を食べなならんかった」
ゆうところだけで、「お前の父ちゃん腐ったご飯が好きなんか」とからかわれて迷惑した!

きっと幼い父は、戦争終結という根本的な解決は先でも、当時その刹那に、
爆弾の降り注ぐ瞬間に、弾の落ちてこない場所をなんとか捕まえるしかない、
生きるも死ぬも紙一重を体感したのでしょう。
ゆえに空襲を受けなかった京都を終の棲家とし、
ここは間違いなく安全な場所と信じられたのかも知れません。
攻撃されることのない安全な場所を切望したが故に、仲居さんに手を差し伸べた。
切実に助けを求めた瞬間があったんやろうと思います。

けどずーっと不思議やったんですよね。
そんな近くに爆弾が落ちたのに、父の体には傷跡がなかったんです。
「少年H」で大量の不発弾が連なって地面に突き刺さる鉄の杭状態になった映像をみて、
いたましく納得しました。
目に見える傷が体に残った方が楽な側面なども、あったかも知れません。

ほんまに、国の戦争もありとあらゆる人間同士のいさかいも、
勝っても負けてもアカン。
けど、アカンというために流される血から目を逸らしたくない。
その痛みを無駄にしてなるものか。
命が関わることには、しがらみ断ち切って動くべき時がある。

でもこれはちょっと思い出さずに間が開くと、大半の人が思い出さなくなってしまう。
「これ忘れられるわけないで?」って体験した人でも、上手く思い出せなくなるみたいです。
そして、毎年そんなことを知らない、まっさらな世代が生まれてくる。
教える人が居なくなったらそのうち、それをわかってる人が誰も居なくなってしまうよね。
だから昔のテレビは毎年視聴率に関係なく戦争を追悼する番組を放送してたんやと思います。
新一年生に必ずひらがなを教えるように。
今って、自分がひらがな読めても、教えてもらわな読めへん人になってたことも知らず、自分で
教えもせんと「あいつひらがなも読めへんのか」と中傷するような無残な人が多過ぎへん?
過激な発言への苦情はあの世の父までどーぞヨロシク♪

しかし兄さん、「おじいちゃん」のナレーションで常にひっかかりを持たせた語り出しの間...
ちゃんと話を受け止めて飲み込んでからの言葉って感じがしました。
対してグラノーラの回はの~びのび声量高かったですが、なんかええことあったんですかあ?[わーい(嬉しい顔)]

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カリコ

この未来に届く記事と届かん記事の違いってなんやろ?
毎回未来の日付になるわけではないねんけど。
そして、未来といってもほんの数分...
by カリコ (2015-02-23 20:18) 

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