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「前のめりで」宴の本番 [舞台]

忘れぬうちに朗読劇についても書き留めておきたい。
トークショーで蔵之介が「ファンの方も友達も、話を聞くと、全身使った普通の劇以上に朗読劇については熱く語ってくれるんですよ」とうれしそうに話していたけど、ほんとそうなる。

蔵「前のめりでね」
亀「前のめりで、それぞれがそれぞれに見てるんですよね」
蔵「俺、ぎんはめっちゃ可愛いと思ってる」
隆「(ヒゲ面の)亀さんが演じてますけどね…」
「俺、ぎんはめっちゃ可愛いと思ってる![手(グー)]
うん、私のぎんは堀北真希ちゃん似やで。

私達観客は朗読劇では演者の助けを借りて、物語と同化する。
それぞれの心の中で可能な限り想像の羽根を伸ばして、
堀北真希を連れてきて、屋根の上に立たせ、紙吹雪を撒かせる。
役者、衣装、舞台の設営、小物手配などの裏方も全て全力でやっちゃうのだ。
知らず知らずのうちに、楽しく激しい精神労働に従事させられてんですよ。

これはすごいことです。

私、人間は与えられるだけでは満たされない生き物だと思ってます。
努力せずに与えられたものって、あんまし大事にしてないような気がします。
大事にしてるものって、やっぱり苦労して手に入れたものとか、
(苦労して手に入れた?)大事な人から与えられたものだったりしませんかね?

それって、頑張ったからこそ、自分はそれに値するだけの働きをしたのだと、
心置きなく満足してもいい人間なんだと、他ならぬ自分自身が認めて、
誉めてくれるからなんじゃあないかと思うのです。
それが、誇りというものなんじゃないかと考えています。
だから負けを認めることが出来たり、少なくても満足出来たり、誉められなくても頑張れたり、
するんやなかろうか。←ほんならやれ

だから朗読劇は精神労働の対価として気持ち良く感動を受取れるんじゃないでしょうか。

さらに、予想外について。
物語に前のめりで同化する質だから、演目の「神無月」と「紙吹雪」はちょっと辛いものだった。
ハッピーエンドちゃうし。

「神無月」は、やっぱり随所で酷く哀しくなった。
けれど「醍醐の宴」では、演者が「そこ」ならではの演出を加えて、だいぶと味わいが軟らかかった。

国宝の大日如来坐像薬師三尊像(5/6訂正)を振り返ってから、「神様の留守の月だ」と言い放つ。
そらそや、ここに居てはんのは仏様やー神様おらん!
亀治郎の地文の若々しく澄んだ朗読と地続きの居酒屋の親父のしゃがれたセリフとの切り替えは完璧だった。
よう混ざらんなーと感心。
蔵之介の柔らかな地文とかすれて思い詰めた押し込み強盗のセリフの演じ分けも冴えてた。
佐藤隆太の真っ直ぐな岡っ引の情も温かかった。捕まえて足洗わせたってー!
岡っ引が蔵之介でなくて良かった。「ハンチョウ」のBGMが流れんで済んだし。
詠み手の役者さんを観てて、ふと、お隣の役者さんが呼吸を合わせて微かに同じ動きをしてる事に
途中から気付いた。同じ調子で、心の中で声を合わせて詠んではるんやなー。

黙読では泣かずにはいられなかった「紙吹雪」。
蔵之介の無邪気で明るい地文のスタートは鮮烈だった。
どんな楽しい物語が始まるのかと見まごうばかりの屈託のなさ。
そう来る?ひー怖いー。
「ぎん、これでお役ごめんだよ」の声音の重さで真相を暗示して、無邪気さを消す。来たよー。
その先からずっと、詠み始め必ず、蔵之介は上を見上げた。
屋根の上のぎんを見守るように詠んではったと思う。
舞台が茜色に染まり、演者共々仏像も染まった様はまさに西方浄土。
そこへ「西方浄土というところへ」と厳かにぎんが言う。(思えば、ここで亀治郎はぎんでなくなった)
泣き所やねんけど、西方浄土過ぎ!!めっちゃここ西方浄土!!
と可笑しくなってしまった。なあ…わらかそうとしてる?そんなことありません。
「ぎんがにっこりと笑顔だけを返した」のところで亀治郎がにっこりしたらどうしようとか思って盗み見たけど、にっこりしてませんでした。ヒゲ面だから、空想の邪魔をするような無粋な事はなさいませんでしたとも。

こんな雑念を刺激してくれはったお陰で、深く同化せずに済みました。
物語は一切書き換えないままで、こんなに楽しませて下さってありがとうございました。
この塩梅が、私にはすごく良かったです。

だって私、「紙吹雪」の黙読で、「残された者の抱える闇」に東北を重ねたりしちゃって、
悲しい気持ちにぐるぐる巻きになったりしてた。
なぜ自分だけが助かったのか、生かされてる意味は何なのか?

ぎん、おっかさんはそんなこと望んでなかったよ。もし望んでたなら、あんたより先に
おっかさんが鋏を使ってたはずや。あんたみたいなええ子、幸せにならんなあかんよー
とか虚しい説得試みたり。
私はぎんを屋根に上らせたくないから、ぎんを見つけたら、上る前に何かしたい。
それをやってからなら、私はぎんにそれでいいよと言ってあげられるかも知れん。
今回の宴への参加は、その一つ。
醍醐の宴から寄付されるお金が、上がらんで済む道造りに使われたらいいな。

結局醍醐寺で私、あ~っさりぎんに「いいよ」って、言えてました。
西方浄土に連れて行かれて、そこからぎんを見たからね。
神様に取りこぼされた人達を、仏様がもれなく救うてくれはりました。
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おーちゃん

え・・・!めっさシタタメテ書いたのに消えた!(涙)
リトライ。。。

意識せんでも、自然とそうさせられそうな話やん?

子供の頃、人と関わるのが苦手で空想が趣味やったけど、(苦)
物語を頭や心で描いていく作業って、どんなに優れた映像技術を持った
クリエイターでも叶わんくらいに壮大っていうか、ファンタジーやんな?

しかも、お寺でそんな話を聞かされた日にゃ~!
改めて仏様がありがたぁ~い存在なんやって感じさせられたよ。
合掌。。。


by おーちゃん (2012-03-27 04:51) 

あきら

こんにちは。
一回ごあいさつしたつもりだったのですが、うまいこといってへんかったみたいです。あらためて、よろしゅうにm(_ _)m
原作もあえて読んでないので、よくわかってませんが、読ませてもらって、もう、うきうきでした!!!あーー、悔しい、観れなくて。
上手いのはええなぁ。役者の人間がいいはええなぁ。舞台ってええなぁ。ってなりました。
by あきら (2012-03-27 18:38) 

カリコ

>おーちゃん

ごめんなーここエラー多いねん!私も書き込まれへんだりで(汗)

超一流のクリエイター!まさに!
おーちゃんの培った技術はしっかり話術に活かされてるやん。
暮らしに役立ててこそ、超一流の文化人やで~
まさに朗読劇は超豪華な「法話」やった(笑)>仏様ありがたぁ~い

>あきらさん

こんばんは!エラー多発のあばら家にお出で下さり恐縮です!
こちらこそ、よろしゅうお願い申し上げます。
覚えてる事をとにかく書き連ねただけの内容ですので、
Leekさんや他の方々のように読み易くて美しいレポが出来なくて
恐縮です、、、
ほんま、上手いのはええなぁ。役者の人間がいいはええなぁ。舞台ってええなぁって気持ちを汲んで頂けて幸いです。

亀ちゃん「世界遺産公演をライフワークにしたい」と明言なさってたので、
お近くでの開催もそう遠くない未来かもですよ!

あ、四国の友人に話したら「四国に世界遺産ないがよー」って
言われたばかりでした(汗)四国にお住まいでしたらすみません。
by カリコ (2012-03-27 21:08) 

Leek

カリコさん、こんにちは~!遊びに来ましたっ。
今日はなかなかこちらに入れなくて、拒否られてるのかと思いました!(ドキドキ)

舞台のご感想も熱く拝読いたしました。カリコさんのお人柄が滲む文章に胸がいっぱいになりました。佐々木の兄さん、あなたいい仕事してますほんと。

そして少しずつですが過去記事も読ませていただいています。石がお好きなんですね。それと、にんじんのソース炒め、ぜひ今度トライしてみますね。美味しそう!
それから、誤解を恐れずに言っちゃいますが、カリコさんが心身ともにご自分を律されているのを感じてとても「かくありたい」と思います。最もわたしに欠けている部分ですので…

では、初めてお邪魔してヘンなこと言ってごめんなさい~。
お友だちのみなさん引かないで~!アデュー!
by Leek (2012-03-29 18:31) 

カリコ

Leekさんっ、こんばんは!
ほんっとにあばら家ボロ屋ですみません~~~~!
大事なお客さんに何してくれんねん?!ソネット!

ええ、ほんと、佐々木の兄さんはええ仕事してくれたはります。
はい、ほんと、私知識は薄っぺらいけど石バカです。

Leekさんのお褒めのお言葉、、、ここ見たら友人はきっと「Leekさん!騙されてんでっ!そんな上等なヤツちゃうでっ!」って総ツッコミ入れると思います。。。。。。。
そんな風に見てくださるLeekさんの御心こそが美しいんです。
大好きだーーーーーー!えーん

お出で下さり感謝感激です。
Leekさんも、日常で描くという文化を活かしてらっしゃる、尊敬する超一流の文化人です。

by カリコ (2012-03-29 22:30) 

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