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幻の山

岡先生様には「それは僕の数学と違う」と斬って捨てられる数学についての思い出がある。
まあ、私立の進学校ではない女子校の授業ですからねー。

テストの答案を返す時、数学の教師がご機嫌で言うたのよね。
「このクラスに満点取った者がいる。皆も頑張るように」
教室ざわめいた。

数学で満点?!そんなん可能なん!

席順とは違う名簿順に返されていく答案。
受け取って内容を確認してたら、後ろの子から肩を叩かれた。
「100点取ったんあんた?」
何で私に聞くんやろう?といぶかしみつつ、正直に「違う」と答えた。
ほしたら私の前の席の子にも聞いてという。
ああ、みっちゃん数学強いもんな。私はついでやったんやーと納得して
みっちゃんに確認。「違うで」やって。
ふーん、じゃあやっぱし学年トップのあの子やろなーと思いつつ、回答を伝えた。

そして答案の返却が終わり、さあ授業開始となった時、私とは席の離れた目立つグループの子が腑に落ちんといった顔で「せんせえ~?おらへんねんけど」

は?

「100点取った子、このクラスにおらへんねんけど。他のクラスと間違ってへん?」

ええっ?!あの質問、全員にしたん?!

教室ざわついたざわついた。
「全員に聞いたん?」「しょーもなー」「聞いてどうすんねや」て囁きに満ち溢れる中、
私はすごいことが解ったーとちょっと感動してた。
私に質問した子は別のグループに入ってる子で、目立つグループの子やなかった。
そのクラスは普通に様々なグループに分かれてて、中には決定的に合わん者とかも居たし
些細な衝突とかもあったけど、向こう三軒両隣、席の近いもの同士は友好関係を築いてて、
自分と同じようにこんな意味のないリサーチに気安う協力してんなーと。

何より、私は交流のなかった目立つグループの子が、その回答に信を置き、
教師の勘違いではないかと指摘したのだ。
クラスメイトの誰かが嘘をついたなんて疑いもせず。

全員がはっとして教師に注目した。

ほんまに居るんなら、それは誰?

教師は教室を見渡してから、「本人の意思を尊重して公表は控える。授業始めるぞ」と終わらせた。

え~~~~~~~。
やっぱしざわついたけど、深追いすることなく全員従った。
そこもまた、良いなと私は思った。
しつこくこじらす子が居らんてことやん。周りに合わせて退く配慮がある。
やっぱりこのクラスには、いじめられっ子が居らんこと証明されたなーって。

けど誰やったんやろう?満点の子って。

ここからが、この証明が数学のテストでなければ起こり得なかった真相解明。※ただし推測含む

満点獲得者が名乗り出なかったのは、それが本当の満点ではなかったからだった。
1問だけ×だったのだ。
にもかかわらず、点数は100点だった。
私の記憶する限り、それは教科書からそのまま出題した基礎のサービス問題で、
それを先に解いてから難問に取り組むレベルのものだった。
それが解けなかったら、他の問題を解ける訳がないという。

そして、最近「3月のライオン」という作品に出会ったことで、
プロ棋士が棋譜から棋士の心情を読み解くように、数学教師もまた、答案から
生徒がわざと不正解を書き込んだ理由を突き止めて、確信を持って×を付けてから
100点を与えたのかも知れんということに気付いた。
でないと、発表せえへんよね。
生徒の方も名乗り出たはずやし。
先生、流れ作業で○×付けてはった訳ではないんやなー。
数学教師には感情がないという思い込みも消し飛ばされた。
先生が100点やん。ほんでもって、クラスメイトの対応も100点や。
この結果は岡先生のケースと同じく、教師も含めた各個人の人間力のたまもの。

ということを何故知っているかというと、私のグループに獲得者が居たからです。
小藩なれど(笑)一騎当千のツワモノ揃いでしたのよ。
みっちゃんは「幻のマウンテンやな」と笑ってました。
当時の仲間内の秘密です。
まあ、今やどーってことない秘密なんですけど、こういうアホらしーいことを
共有して秘密のままにもして置けへんような覚悟では、楽しい学校生活も社会生活も
人生丸ごと難しいなるんやろなと、おばちゃん思います。

確か櫻井翔くん主演の「先に生まれただけの僕」で、数学は考え方を学ぶための
学問と言っていた。
数学教師がその技を生徒の心情を解読することに使ったんやったとしたら、素敵。

高くそびえる幻の山の頂の向こうにあるものは。
平さんも大杉さんもそこへ行かはったんかな。
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