So-net無料ブログ作成

夏目漱石の妻

結構なバイオレンスやったけど、面白かった。
3話の『不実不人情』話はすごかった。
幼い漱石がしたためた「互いに助け合い、不実不人情にならぬよう生きて行こう」
という純真な約束を出汁に使ってタカりに来た養父の哀しさが壮絶でした。

不実とは、見て見ぬ振りをすること。不人情とは、昔を忘れることだ。

これを口にした養父こそが、後ろめたさの心痛(胃痛)や、あんなに可愛がってくれた人なのに
というショックに打ちひしがれる漱石の苦しみを見て見ぬ振りしてた。

漱石が養父とすれ違っても見て見ぬ振りをしたのは、養父の窮状を伝え聞いていて、
「俺はこいつにタカる権利がある」という邪心を育てて欲しくなかったから。
昔を忘れていない純粋な人やからこそ、ああなってもーたんやろなあ。
(自分は結構昔の事を覚えてる方やと思ってたのだけれど、ああなってないところを見ると
さほど純粋ではないなと自覚するわ。自分に甘いので、心地よい記憶だけ手近に置いて、
辛い記憶は納戸の奥。忘れはしないけど、思い出しもしない。)

助け合いという言葉を口にする人に限って、助けられる側の算段しかしてない人が多い。
けど、助ける側の算段をしてる人もちゃんといらっしゃる。
そういう出会いだけをピンポイントで渡って行けたらな~と思うけど、
そうなったら、私自身が助けられる側の人で居続ける羽目になる。
それでは私のためにならんからこそ、イヤな遭遇も必要と解釈してる。

少なくとも漱石の創作と精神状態を助けた猫は、
助ける気も助けられる気もなかったろうけどね。

ただし、猫はどうやら「これ美味しいねんで。食べてみ?」とか、
「ここ気持ちええねんで~」とか、自分が良いと思ってるもんや場所を
オススメして共有したくなる人間臭い生き物のようで。

私ね、学生の頃たまに実家の屋根を読書室にしてました。
当時の飼い猫トラが教えてくれたんです。
「どこ行くんー?」と戯れに声を掛けたら、ちょっと進んでは私を振り返って待つので
ついてきて欲しいのか?と本を片手についていったら、はしごを使わず簡単に上がれるルートを披露。(追記:その簡易さたるや、本を持ったままで、たとえ両手が塞がっていても、猫より大きな人間が易々と屋根に渡れる猫の道をトラは示してくれました。物理的には、ほんの一跨ぎで屋根の上という魔法のような道やった。この経験は私のものの見方に影響を与えましたとも。

私が実家の屋根に登るということは、ただそれだけで世が世なれば御手討ち必至の大罪でした。
いや、現代でも女の子でなくとも、色んな意味でとっても危険な行為でしたが、
お陰で施されてた沢山の型が一撃で破られました。しかも、たった1匹の猫が一緒やっただけで
おとがめなしやで。今更やけど、これってすごくない?
私はトラよりもずっと前からその家で暮らしてて、ずっと見てきた景色やったのに、
まさかそこに道があるとはそれまで気付かんかった。人間の”常識”が叩き込まれてたから、
そんな発想浮かびもしなかったんです。ずっとそれは目と鼻の先にあったのに。)

また私を見つめて待つので「来いってか!」と笑いながら後に続きました。
気持ちよかったですねえ~誰も上なんか見いひんから見つからへんの。そこは”常識”の外やった。
ネコとごろごろしながら夏目漱石の「こころ」を読みました。

まあ、そのうち家族に見つかってしまい怒られるかと思いきや、トラが教えてくれたことと、
「こころ」を読んでることを伝えたら、「あ~それは…面白いやろ?読んでてええわ」と
名作を読んでる時ならお手伝いも免除になりました。
最上の書斎を猫と漱石に用意して貰った少女時代…
ほんまなら蔵に閉じ込められててもおかしない奇行ばかりでごめん。

…なんかまさに「我輩は猫である」?猫と漱石という組み合わせやったから、親も笑って許さずには居れんかったのかもですね。
nice!(13)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 13

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0